国際防災戦略研究室(ISDM)からのご挨拶
国際防災戦略研究室のWebサイトにお越し下さいまして御礼申し上げます。東北大学災害科学国際研究所の村尾修です。
私は横浜国立大学で建築を学び,安藤忠雄氏の建築に惚れ,国内外の有名建築や街を見て歩き,意匠および計画系の分野に進もうと思っていました。そして大学院の博士課程を直に終えようとしている1995年1月17日,あの巨大地震が発生しました。兵庫県南部地震です。その直後に,当時師事していた村上處直教授(都市防災)から,「防災の世界にデザインのわかる人間が必要だ。ちょっと,君,手伝ってくれ。」というお言葉をいただき,佐土原聡先生にも相談しつつ,戸惑いながらも,都市防災の世界に足を踏み入れました。
その後,村上處直先生の事務所である(株)防災都市計画研究所をお手伝いさせていただくようになりました。そこでは,関東大震災後の帝都復興計画による震災復興公園の調査等に関わらせていただき,また早稲田大学の尾島俊雄先生や村上先生らが運営されていた災害情報センターの研究員として,阪神・淡路大震災に関するシンポジウム等も企画させていただきました。そうした中で,当時東京大学生産技術研究所の教授をされていた片山恒雄先生らとの交流も始まり,それが縁で1996年の暮れから生産技術研究所にて本格的な研究に携わるようになりました。
生産技術研究所では,山崎文雄先生の助手として,1995年兵庫県南部地震による建物被害に関する研究を行い,また阪神・淡路大震災に関する情報拠点としてのKOBEnetの運営や,生産技術研究所の防災マニュアルを作成させていただきました。同じ頃,若松加寿江先生や目黒公郎先生にも大変お世話になっています。そして,1999年に「兵庫県南部地震の実被害データに基づく建物被害評価に関する研究」により学位をいただきました。このように,建築計画,都市計画,建築意匠,建築構造,土木工学,地震工学の分野を横断的に渡り歩いた後に,1999年台湾集集地震が発生し,復興研究に関わることになります。その直後,2000年12月に筑波大学の職を得て,初めて研究室を持つことになりました。
筑波大学では,熊谷良雄先生や糸井川先生のいらっしゃる都市防災計画研究室の一員として,社会工学類都市計画主専攻,システム情報工学研究科リスク工学専攻に所属し,都市・建築設計や「東京の都市学」などの講義を担当するかたわら,都市防災や都市リスクを専門とした研究を行ってきました。結果的に,筑波大学には2013年3月まで在籍し,同4月にまだ設立されて1年しか経っていない東北大学災害科学国際研究所に着任しました。災害科学国際研究所では,国際防災戦略研究分野を担うことになりましたが,筑波大学での12年間に築いてきた都市防災復興デザイン研究室が,現在の国際防災戦略研究室の母体となっています。
我々の研究の対象は,国内外で発生した災害の被災地ならびに,災害のみならず環境の変化や複合した社会システムなど様々なリスクをかかえる地域と都市です。基本的には,そうした地域と都市が抱えている諸問題を,空間およびデザインという視点を通じて解決するための研究とデザイン提案を行っています。
また,これまでに関わってきた多くの方々,私の指導を受けるべく研究室に配属となった筑波大学および東北大学の学生と卒業生,そして世界および国内の研究者との交流など,研究室を通じて生まれた人と人とのネットワークも大切にしていきたいと思っています。
まだ生まれたばかりの研究室ですが,こうした研究に興味のある研究者や学生とともに,時間をかけて夢のある研究室を育てていきたいと思っています。今後とも世界の減災のために,貢献していきたいと思っています。どうぞ末永く御指導,御鞭撻のほどよろしくお願いします。
2014年4月1日
東北大学 災害科学国際研究所
地域・都市再生研究部門
国際防災戦略研究室
教授 村尾修